視覚だけの連続

 スクリーンに蜿蜒と映しだされる夜のエンパイアステートビル。荒い画像は時折微かに歪み、プチプチという小さなノイズ音が混じる。固定されたカメラ。物語は完全に排除され、細かく震えるビルの光の粒子にかろうじて時が流れていることを知る。網膜は絶えず、闇に滲むあやうげな光と色を感じている。不安と痺れが綯い交ぜになって、発作的な痙攣に達する寸前、解離に似た恍惚に変わる。わたしは目をひらいたまま、瞑想状態に陥っていく・・・・・・

 サイケデリックな映像などない。トリップできる音楽もない。ひたすらエンパイアを映し続ける、たったワンショットの映画。こわいくらい何も起こらない、ウォーホルの「エンパイア」。アバンギャルドって何? モダニズムって? わたしにはわからない。芸術なんてわからない。ただ、禅に似ていると、18歳のわたしは思った。